徳島で働き始めました。


by lulucchi

善き人のためのソナタ・・・書かずにいられない!

善き人のためのソナタ(公式)」がアカデミー外国語映画賞を撮ったみたいで、とても嬉しい!
自分としては、久々に打ちのめされる映画だったので・・・・。自分のベスト5に入るよ。

それ以来レビューを書こう書こうと思いつつも、自分の中では色々なモチーフが浮かんでは消え、うまく文章にすることができませんでした。文才のない自分がダメだ・・。
とはいえ、書きたい気持ちだけは募るばかり。とりあえず書けることを書いてみます。

「DAS LEBEN DER ANDEREN」・・原題は「他者の人生」
冷戦下の東ドイツ。物語は一人のシュタージ(国家保安局員)と二人の芸術家を軸に進む。シュタージの仕事は反政府的言動を取り締まること。任務を至上のものとし、国家を疑わない彼は、それが政府高官による恣意的なものであることを知りながら劇作家と女優の暮らしを盗聴・監視し続けます。パーティに現れた人の発言、夫婦の会話からセックスまで。国を代表する芸術家として恵まれた環境にある二人も、悩みを抱えながら妥協点と接点を求めてゆく。けれども、ある時を境に3人の生活には変化が訪れます。3人ともが、それぞれの自由と信念を持って。そして、物語は終末へ。

で、まず主人公のシュタージたるヴィースラー大尉の存在感に圧倒される。彼は決して悪人ではない。けれども、国家のために与えられたことを普通にこなす。それが48時間の尋問であっても、盗聴を見られた一般人への脅迫であっても。実に淡々と。それが彼の国家に対する仕事だからだ。
けれども彼の内面は彼を取り巻く風景と同じく寒々しく、味気ない食事や、あるいは娼婦と時間を過ごす事、それさえも彼を満たしているとは思えない。そもそも、妻がいつ密告者になるかもしれないような社会で、シュタージがおちおち結婚できるはずもない。

そして彼を取り巻く世界の何といびつなことか。PKディックのような悪夢的統制社会が、実にリアルな形で迫ってくる。そりゃ実際に使われてた建物で、実際にシュタージに監視されてた人がやるんだから。ホーネッカー議長の小噺をしたことをうかつにも聞き咎められ、名前と所属を聞かれる局員。誰も国家体制を信じていないのに、そこに従わざるを得ないという奇妙。

だからこそ後半、ブレヒトを読み自由を知り、変わっていく彼は見るものの心を解き放つ。エレベーターで一緒になった子供にも優しい眼差しを向けるヴィースラー。けれども、国家からの命令の前では、彼はただの1役人に過ぎない。自由を自分なりの手段で守ろうとするヴィースラー。危険すぎる。それがまた見る者に不安感を与えていく。

ヴィースラーに監視される劇作家ドライマンと女優マリアの存在も素晴らしい。「革新的」作家でありながら国家の許可の下でしか作品を発表できない矛盾に悩むドライマン、自己への自信のなさから薬に頼り、女優像と自分の葛藤に苦しむマリア。彼女はまた、政府高官からの庇護要求にも苦しんでいる。そして彼らの仲間の死(仲間は政府により芸術的活動を禁止されて、そして死んだのだ)から、本当の自由を求め始める。それは自然な心が求めるものであったが、少なくとも東ドイツにあっては危険な活動だった。

そしてドライマンは自由の為に、マリアは自らが女優であるために、ヴィースラーは自らが耳にしていた世界を守るために行動を起こす。3つの望みは同時にはかなわない。そこが涙を誘う。
・・・ベルリンの壁が崩壊した後、亡くなってしまった3人のいた世界。けれども生き残った二人に起こるドラマを、ぜひ見てほしい。
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by lulucchi | 2007-02-28 00:56 | 映画